オープニング記念展と今後の展開(500m美術館常設化検討委員会委員 吉崎元章)

札幌中心部に新たに生まれた展示スペースのオープンを飾る展覧会として、札幌を拠点に活躍する約50人の作品が前期、後期に分けて展示されます。 出品作家は、絵画、版画、彫刻、陶芸、書、写真などの各分野にわたり、年齢も25歳から88歳までと幅広いものになっています。 それは、札幌の美術の現在を広い視野からとらえ、一断面ながらもその多様性を見せるものと言えるでしょう。これほどの規模でジャンルや所属団体を横断した総合的な展覧会が公的に開かれるのは、市民ギャラリーにおいて2001年まで行われていた「さっぽろ美術展」以来、11年ぶりのことです。この「札幌大通地下ギャラリー500m美術館」を創設するにあたり、札幌市は市内の美術関係者等6名による500m美術館常設化検討委員会を組織し、目的とすべきことや展示内容、必要設備、運営体制などについて昨年度から幾度も話し合ってきました。オープニング記念展の内容及び作家選定においても、その一環としてこの委員会で検討されたものです。私もそのメンバーの一人でしたが、新たな場のお披露目的な意味合いが強いことから、より多くの市民に関心をもってもらうこと、そして様々な作品の展示を通してこの場所の使われ方の可能性を示すことも、本展を決めるうえでのねらいであったと記憶しています。50人という作家数は、「500m美術館」という名称との関係もありますが、何よりも一作家あたりの展示壁面を増やし横長の空間の特性を活かそうというところからきています。札幌に数多くいる優れた美術家、書家のなかから絞り込むことはかなり難しい作業でしたが、最終的には多彩な表現を見せることや世代的な広がりを考慮し、このような出品作家になりました。展覧会全体として札幌の厚い作家層や表現の豊かさを示すものとなっているのではないでしょうか。

このギャラリーの最大の特徴は、展示壁面が一直線に続くことです。地下鉄大通駅とバスセンター駅間の約500mをつなぐ地下コンコースは、これまで薄茶色のタイル張りの壁に電飾広告や案内表示が点在する単なる通路でしたが、その片側壁面のほどんどが白壁に置き換えられ、強化ガラスのカバーも一部設置されて、新たなアートスペースとして生まれ変わったのです。既存の諸設備及び構造上、いくつかに分断されているとはいえ、まっすぐに連続する白壁は壮観です。展示可能な壁面の長さを合わせると一般的な美術館の特別展示室に匹敵します。一方、歩行空間であるためにいくつかの規制があり、90cmまでの奥行に加え、温湿度や防犯上の問題から展示作品にもある程度制約があるのも事実です。そのため、オープニング記念展においても出品を断念した作家が何人かいました。しかし、それらを越えて余りあるほどの魅力と可能性をもった空間であることも確かなことです。この希有な空間に刺激された新しい表現も生まれてくるでしょうし、絵巻物のようにストーリーをもたせた展示も可能でしょう。

これまで往来していた平日約9000人の通行人だけではなく、ここがいかに多くの市民にとって有意義な場となり、また札幌から美術を内外に発信するひとつの拠点となっていけるかは、これからの展示の展開にすべて掛かっています。来年度以降は、年に4回程度の企画展を計画していくということですので、実験的なものを含め、様々な切り口による、ジャンルや世代、地域を問わない展覧会が次々と行われていくことでしょう。この長い壁面を有効に活用しまとまった展示内容にするためには、相当な企画力、運営力が問われます。市民にとっての作品鑑賞の場、作家の発表の場であるだけではなく、そうした人材を育成していくこともここの機能として期待されます。市内の他の文化拠点とも連動するとともに、ここでの活動や培ったノウハウなどが、今後の札幌にさまざまな側面から刺激を与えていく存在になってほしいですし、市民や作家達とともに育てていくべき場であるとも思います。

札幌市市長 上田文雄からのご挨拶

芸術の秋、いよいよ「札幌大通地下ギャラリー 500m美術館」が誕生しました。これまで札幌の秋を彩るアートイベント「さっぽろアートステージ」の美術部門として期間限定で行われておりました「500m美術館」ですが、このたび常設化され年間を通じ様々な企画を行うことが可能となりました。ご来場の皆様におかれましては、素晴らしい数々のアート作品を是非心ゆくまでご堪能いただきたく存じます。

今年3月には、札幌駅前通地下歩行空間がオープンしました。地下街や北一条地下通路などがネットワーク化されることで、より多くの人々が行き交うようになり、街の賑わいを創出することができました。地下鉄東西線の開通とともに完成したこの通路も約35年が経過しましたが、今回、500m美術館の常設化によりイメージを一新し、芸術の力で通路のみならず地域の活性化につなげたいと考えております。

また、通路という誰もが利用できる空間での作品展示には、文化芸術に対する敷居の高さを乗り越えさせる役割も持てるものと思います。 市民の皆さんがここに展示される素晴らしい芸術に触れていただくことを契機とし、札幌の文化が限りなく発展していくよう願ってやみません。そして、このようなアート作品を展示・観覧できる場を設けることで、札幌で活躍するアーティストを国内外に発信することや、国内外の作家の作品を展示し、札幌のアートシーンに刺激を与えることができるようになり、「創造都市さっぽろ」として一段と魅力を増すものとおおいに期待をしているところです。

結びとなりますが、このたび快く出品を引き受けていただいた作家の皆様に感謝し、更なるご活躍を祈念いたしますとともに、今後ますます「500m美術館」が市民の皆様に愛され札幌の文化の発信の場となることを期待し、ご挨拶とさせていただきます。

上田 文雄(札幌市市長)

500m美術館ホームページがオープンしました。

札幌市では、平成18年度から「さっぽろアートステージ」の美術部門として、地下鉄大通駅とバスセンター駅を結ぶコンコースを会場に11月限定でアート作品を展示してきた「500m美術館」の常設化に当たり、美術関係者などで構成される委員会を設置し、整備内容の検討を進めてきました。 このたび、駅施設内の通路に設置するギャラリーとしては日本で最長の施設が11月3日誕生します。
このギャラリーにさまざまなアート作品を通年で設置することで、市民が国内外の多彩な芸術文化に触れる機会を増やすとともに、札幌で活躍するアーティストを内外に発信していきます。

当ホームページでは、展覧会のスケジュールや情報はもちろん、ブログやツイッターなどを用いて様々な情報をお伝えしていきます。

ホームページともども500m美術館のこれからの展開にぜひご期待ください。

500m美術館 オープニング記念展[前期展]

会期 : 2011年11月3日~2012年1月28日

札幌で活動している優れた芸術家(約50名)の作品を一堂に集め、
前期・後期の二期に分けて札幌市民の皆さんにお披露目いたします。

「さっぽろアートステージ」の美術部門として、札幌市が2006年より地下鉄大通駅とバスセンター前駅を結ぶコンコースを会場とし、例年11月限定で開催してきました「500m美術館」は、このたび常設のギャラリーとして生まれ変わります。駅施設内のものとしては日本最長のギャラリーで、長い展示面を活かしたさまざまなスタイルの芸術作品が道行く人を楽しませてくれるはずです。オープンから半年間は、札幌を代表するアーティストの作品が数多く展示されますので、是非ご期待ください。

企画・作品に関するお問い合わせ:オープニング展事務局(CAI02内)011-802-6438(13:00~19:00 日祝休み)

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