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第9回 500m美術館賞 入選者 審査員コメント

入選者(50音順) 審査員コメント

 

kugenuma(港千尋・キオ・グリフィス)

「radio silence」

kugenumaは、ガラスケースの密閉された空間をひとつの「メディア」とし、「沈黙」という音をテーマにしたプランを提出した。音を出すことができないという500m美術館の制約を逆手にとったチャレンジに注目した。視覚的に興味深い展示物、ジョン・ケージの「4’33”」作曲70周年のオマージュを含んでいること、Q Rコードやラジオを通して音を聴くことができる仕掛けなど、展示が幾層にも重なって見ることと聞くことを楽しむことができる構造になっており、実際に体験してみたいと思わせる作品である。

 

木村直

「この森で誰かが、⽣活をしていた」
「らい園に美談などあるものか あらいでかというもの あなたもベロニカ」

木村直さんはハンセン病療養所の記録と継承をテーマに作品制作をしており、作品に社会との強い関わりが感じられる。写真の表現方法、技法が異なる2つのシリーズをそれぞれ別のガラスケースに設置することで、展示の見え方に広がりを持たせることができるだろう。国立療養所の垣根を写した作品「この森で誰かが生活をしていた」は、並べて展示することで実際の建物の横を通るような感覚を得ることができるのではないか。500m美術館の特性を生かした実際の展示を見てみたいと思わせた。

 

白川 深紅

「胸中山水」

巨大な皮膚を想起させるような布をストレッチさせて水墨を使用したプランは、素材や視覚的ダイナミズムを感じさせる魅力があった。獣の皮を干しているようなワイルドなイメージが想起され、展示への期待が高まった。北海道で根雪になる前の石を拾って使用していることも興味深い。プラン通りの効果が出るのかを事前に検証し、素材や技法に工夫を凝らして耐久性のあるインスタレーションになるように検討してほしい。

 

朴 炫貞

「さよなら、アノハシ ― 記録と記憶の間で」

朴がテーマにする石山通りに渡された北海道大学のキャンパスをつなぐ橋は、2021年10月に老朽化により撤去された。街の中で忘れられてしまう消えゆく存在にフォーカスした点が興味深かった。橋について覚えていることについて情報を市民から募る予定であり、それによって生き生きとしたエネルギーをもつ作品へと発展することが予想される。市民の記憶や歴史を通して新たな視点を得ようとする魅力的なプロジェクトだと感じた。