今義典
Kon Yoshinori


「川口のあけみ」
「父と息子」

質感や感覚をテーマに
このお題に向けてまず最初に頭をよぎったのは、細野晴臣氏の「想い出を呼び起こすもの、それは音楽と匂いだ」と言う言葉です。聴覚と臭覚は本人の思いを越え、直接「あの時」へ連れていってくれます。その場の雰囲気、温度、ざわめきなどが実に生々しく蘇り、しばしわたしたちを放心させます。
近作の写真作品によるシリーズでは、わたしは「視覚」でこれに挑戦しています。体験はしていないのだけれども、この風景をどこかで見たはず、という既視感のようなものを、同世代に向け発信していくことを使命とし制作を続けています。

Profile

今の写真作品は、観る者の哄笑をさそいながらも、笑いにとどまらない深層心理に訴えかける奥行きがある。その心理とは、個人にとっては思い出すのも憚られる恥ずかしい記憶であったり、あるいは奇異な人物への好奇心であったりもする。さらに言えば、被写体である人物の行為やその立ち振る舞いに対し、人間の反倫理的な感情をも刺激する毒が隠されている。しかし今は、それらの被写体を単なる他者/笑いの対象として突き放すだけではなく、愛おしさをもって撮影している。

かつては硬質な写真、映像、インスタレーションで人間の精神世界に着眼してきた今義典は、2006年の作品「川口のあけみ」から一転して、日本人にとってどうしようもなくドメスティックな光景や、映画やドラマのクリシェをなぞりながらも前後の物語を切り落としたような写真を制作している。それらは綿密なロケーション調査の上、モデル、俳優を使い、念入りな演出によって大判カメラで撮影され、細かいレタッチを施すことでさらに様々な物語性が取り込まれる。観る者は各々そのディテールを追いながら写真に写りこんだ物語を読み込むことになるのだ。
評/東谷隆司

■主なグループ展
2013年 「京都版画トリエンナーレ」 京都市美術館(京都)
2012年 「メディア・アーツ・フェスティバル2012」ICC(札幌)
2010年 「‘NowAsian Artst' 釜山ビエンナーレ2010 特別展」 (釜山/韓国)
     「あれから20年これから20年」 リクルートガーディアン・ガーデン(東京)
2008年 「現代写真の母型2008」 川崎市民ミュージアム(神奈川)
2005年 「D/J Brand 展」 東京芸術大学美術館(東京)
2001年 「outer-inter:現代写真の動向」 川崎市民ミュージアム(神奈川)
     「生きろ*1980年から現在に至る日本の現代美術展」
     クレラーミュラー美術館(オランダ)
1991年 「アートポート99-メデイアセレクト」
     名古屋港20号倉庫/WAREHOUSE(名古屋)
     「VOCA 2001」 上野の森美術館(東京)

■受賞歴 
1992年 第1回写真新世紀 優秀賞/荒木経惟選 第1回ひとつぼ展「3.3m²」展グランプリ