楢原武正
Takemasa Narahara
photo : Keizo Kioku
提供 : 創造都市さっぽろ・国際芸術祭実行委員会
Profile
1942年、十勝広尾町生まれ。札幌在住 過去20年以上「大地/開墾」と題した、鉄や空き缶、車の部品といった廃品を寄せ集め、積み上げ、貼り付け、結び付け、それらを叩き、潰し、錆びさせ、変形させ、全てを黒色に塗りつぶすインスタレーション(空間そのものを作品化すること)を発表し続ける。今年72歳になる楢原は、十勝の開拓農地出身であり、彼にとっての黒は正に北海道開墾の黒土を表すと共に原風景であるのだ。その意味では、いかにも道民らしい、北海道の歴史を踏まえた作品なのかもしれない。ただし、使われる素材は現代が生んだ人工の廃棄物による群れだ。近代化や工業化がもたらした社会問題を背負いつつ、廃材を集め叩き、潰し、釘を打つ日々の積み重ねは、楢原にとって新たな大地を開墾する祈りとも言える行為なのである。厳しい自然環境での開墾を幼い時期に経験し、現在は札幌の都市部に生活する楢原が思う人生観によって「大地開墾」という空間を創造させているのだろう。主な展覧会に「イメージ群−北海道の美術1986」(北海道立近代美術館)、「第20回現代美術選抜展」(豊田市民文化会館他 1987)、「イメ−ジ響−北海道の美術1987」(北海道立近代美術館)、「北の創造者たち1991 金属のフィ−ルド・今・」(札幌芸術の森美術館)、「道東の美術展」(北海道立帯広美術館、1992)「札幌アバンギャルドの潮流展」(北海道立近代美術館、札幌1994)、「北海道立体表現展」(北海道立近代美術館、札幌2001)、「楢原武正展」(大通美術観、札幌2000〜2014)などがある。今回の展示は長さ40mにも及ぶ「大地/開墾」である。その光景は開拓農地の原風景を彷彿とさせる一方、近代化・工業化への問題提起にもなっている。